現実

 ソファーに座っているセフィロス。
 右手にグラスを傾け、左手で本のページをめくっている。

 ブラウン管には今日一日の出来事を淡々と述べるキャスター。

 そんな光景は同じビデオを見るように毎日繰り返されて、永久に続くような錯覚を覚える。

 目の前にながれる同じ映像は、現実感を薄れさせ、まるで夢の世界のよう。

 夢から醒める時がくるとするなら。
 それはきっと前触れもなく襲い来るだろう。

   とてつもない恐怖を伴って。

 俺は足早にセフィロスの隣に近づいて、ソファーに座った。

 セフィロスは俺の方を見ることもなく、本に視線を落としたままだ。

 それはいつものこと。
 俺の気配に気づいてはいるが、あえて俺に話かけてくることはない。

 俺は別にそのことに不満があるわけではない。
 仮にここで俺が話しかけたりすれば、セフィロスはきちんと答えてくれる。

 答えが返ってこない日が来るのが怖いのだ。

 俺はセフィロスの横顔を見つめた。
 どんな表情も記憶にとどめておくために。

 カタン。
 セフィロスの右手はグラスをテーブルの上に解放した。

「クラウド」

 セフィロスは空いた右手で俺の肩を抱き寄せた。
 すぐに左手も背中に回されて、俺はセフィロスの腕の中にすっぽり収まる。

「どうかしたのか? 不安そうだな」

 セフィロスは俺の思いを簡単に見透かしてしまう。
 だから……。

『大丈夫だよ』

 こんな台詞は通用しない。
 俺には素直に吐き出す術しか残されていない。